福島地方裁判所白河支部 昭和43年(ホ)25号 決定 1968年8月21日
被審人 後藤八郎
主文
被審人を過料金七、〇〇〇円に処する。
理由
別紙記載のとおり。
(裁判官 柳沢千昭)
別紙
(理由)
一 当裁判所は、本件につき、いわゆる略式手続により、昭和四三年七月二四日付決定をもつて「被審人を過料金七、〇〇〇円に処する。」旨決定した。
被審人は、同決定に対し異議申立期間内に異議の申立をして、その異議理由として、登記かい怠の責任あることは認めるが、情状をしん酌し過料額を減額する決定を得たい旨陳述した。
よつて、当裁判所は、審尋期日を定め、被審人に意見陳述の機会を与えたところ、被審人は、昭和四三年八月二一日当裁判所に到達の「過料金の納付について」と題する書面をもつて、「前記異議申立は取下げる。さきに決定のあつた過料七、〇〇〇円を納付したい。」旨陳述した。
よつて、右異議の取下が許されるか否かにつき考察する。
非訟事件手続法第二〇八条の二第二項所定の適法な異議の申立があるときは、過料の裁判は失効し、裁判所はあらためて裁判をなすべき義務を負うものであり、その後に被審人が異議の取下をすることを許容していると解釈すべき法律上の根拠を見出すことができない。けだし、かりに、異議の取下による事件完結を許容すると解するならば、異議の取下により異議申立前の過料の裁判が再び効力を復活することを是認しうる法律上の根拠規定があるべき筈のところ、さような趣旨の規定は見あたらない。
さらに、異議の申立とその取下をともに許すとすれば、被審人の恣意により異議の申立とその取下が交互に繰り返されることにより、過料の裁判の形式的確定が妨げられる結果を甘受しなければならないこととなる。かように検討してくると、むしろ、法はかかる不都合な帰結を生ずる異議の取下を許さないと解するのが相当である。
二 よつて、本案につき考察するに、被審人は、福島県製粉工業協同組合の代表理事であるが、昭和四〇年五月二七日に代表理事後藤八郎は重任したので、法定の期間内にその旨の登記手続をしなければならないのにこれを怠り、昭和四三年七月一一日にその手続をしたものである。
右の事実は、登記官作成の通知書及び登記簿抄本により認められる。
よつて中小企業等協同組合法第八六条第一項、第一一五条第二号、非訟事件手続法第二〇七条、第二〇八条の二の規定により主文のとおり決定する。